君の背中を追う 〜6話〜

竜宮たつき

 
「……」
「……」
 オレも村上も何もしゃべらない。重い沈黙が続いている。
 あの後、バレンタインだと気付かなかったバツに、村上と二人で帰らされることになった。木戸の怖〜い表情でにらまれて、断ることなんてできはしなかった。
「な、なあ」
 沈黙に耐えかねて、オレは言葉を出した。
「食ってもいい、あのチョコレート?」
「へっ……い、いいんじゃない? もうあげたんだし」
 とりあえず、カバンから袋を取り出し、一つを取って口に入れてみたが、
「なんつうか……斬新な味だな? 塩チョコレートってヤツか?」
「ちょっ、そんなわけ――」
 村上はそう言いながら、オレの手の袋からひとつ取り出して、口の中に入れて、
「…………しょっぱい」
「だろ? まあ、その、おいしいけどさ」
「いいよー! 無理しなくても!」
 そう言いながら、村上は袋を盗ろうと手を伸ばしてきた。
「大丈夫だって。最近の流行りじゃんか? 塩キャラメルとか、塩クッキーとか、あと塩……」
 考えようとしている途中で、村上は必死に手を伸ばしながら、
「ダメだって、おいしくないから、作りなおすよ」
「や〜だね、せっかくの景品だ、返さね〜。それに――」
 オレが良い事を言おうとしたのに、手を伸ばしてきた村上は、届かずに空振り、勢い余ってすっころんだ。
「……うぅぅ」
 村上は涙目になりながら見上げてくる。
「おいおい、大丈夫かよ?」
 手を差し伸べながらよく見ると、村上はひざをすりむいたらしく、うっすらと血がにじんでいる。
 立ち上がった村上は、オレの方を見て、
「傷物になっちゃった……責任とってくれる?」
「はっ? ……あぇぇ、えぇ……あの……」
 困惑していると、村上が吹き出した。
「ぷっ、冗談じゃん。なに本気にしてるのよ、シュン〜! アタシがほしいのか〜?」
「……はんっ! いらねぇよ、男女なんか」
「かっかっか、アタシが男なら、女々しい女のシュンがちょうどいいかもね」
「な、オレのどこが女々しいって」
「そうやってすぐにムキになるところとかね〜」
「べ、別にムキになんてなってねぇよ!」

 他愛のない会話と、しょっぱいクッキー。
 こんな話を、二人で笑って思い出せる日がくればいいなと思うが、口には出せない日が続いている今日この頃だ。
 


終わり・・・


あとがき

 お久しぶりの方はお久しぶりです、始めましての方は始めまして、ナナイロ図書館館長の竜宮たつきです。
 いかがでしたでしょうか?
 後半は駆け足での更新になってしまいましたが、『君の背中を追う』全6話、これで終了です。

 冬というわけでバレンタインですが、いかがでしたでしょうか?
 まあ、これはもともとクラブの冊子に載せたものを加筆修正しただけのものなんで、読んだことのある方もいらっしゃるかもしれないですがね……
 あのホームページでいただいた感想に、『良くも悪くもギャルゲーの中盤』というのがありましたね。
 確かに、と読み直しながら思いました。
 カテゴリー分けすると、スポーツ+恋愛なんですが、そこまで深い恋愛になるというわけでもなく、告白すらありませんしね。
 的を射たお言葉だと思いましたね。
 ギャルゲー、大好きですから♪
 トゥーハーとか、ダカーポとか、双恋とか。最近はあまりですが、これを書いたころというのは、確か安売りしていたトゥーハート2をやっていたころですし。
 恋愛経験の薄い私なんで、深いところまでいかないのかもしれないですね。

 次回の予定はまだありませんが、いくつか企画を進行中ではあります。
 春なんでね、入学とか、卒業とか、その辺ですかね?
 次もきっと近いうちに書き始めるので、ほかの作品ともども、よろしくお願いします。
 それでは、館長の竜宮たつきでした。
 


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