「これなんてどうかな?」
「う〜ん、もう少し落ち着いた色の方が、朱里様っぽいと思いますよ」
「あら、わたしには派手な色は似合わないかしら?」
「いえ! 落ち着いた色の方が、大人っぽいなと思っただけですよ〜」
朱里とかおり、2人は電車に揺られて都会へ買い物に来ていた。
ウィンドウショッピングを楽しむ2人、生徒会4姉妹のなかで一番オーソドックスな休日を過ごしていた。
「何かペアで買いたいわね?」
「えっ! いいんですか?」
「あらあら、良いも悪いも、その為に来たようなものよ?」
「は〜、そうだったんですか〜」
「何が良いかしら? 服のペアは少し恥ずかしいけれど……」
「そうですね〜〜〜、リングとかは?」
「普通よね〜、もう少し何か……」
「アンクレットは?」
「なくしそうじゃない? 歩いているうちに」
「じゃあペンダントとか?」
「そこが一番妥当よね〜」
そんな話し合いのすえ、アクセサリーショップに行ったのだが、
「なんだか今一つね〜」
「そうですね〜」
そんなとき、
「何かお探しかい? お嬢さん方」
「……ユウコ様?」
「久しぶりね〜、朱里」
「あの〜、どちら様でしょう?」
「わたしの2年上の生徒会のメンバーだった方で、詩乃姉様のお姉様よ」
「えっ! すいません」
「構わないわよ。それより、アクセサリーをお探しなら、良いところを紹介してあげましょうか?」
特にあてのなかった2人は、ユウコについて行くことに。
「いらっしゃ〜い、あれ? ユウコちゃん。それに後ろのお嬢さん方は?」
「あ〜、高校の後輩なんだ。良いものないかな?」
「ありがたいね〜、で? 何をお探しだい?」
「ペアのペンダントか何かを」
「う〜ん、ペンダントね………、これは?」
そう言って2人に見せたのは、十字架の真ん中に赤と青のガラス玉がはめられたロザリオだった。
「中央のガラス玉の色はペアではないけれど、他はそっくり一緒。青はアクアマリン、赤はルビーのイメージ色だよ」
「は〜、キレ〜」
「どうする、かおりちゃん?」
「朱里様が良ければ、これがいいです」
「ふふ、じゃあ決まりね。それでお願いします」
「あいよ、毎度あり〜。ラッピングはどうしようか?」
「いいえ、そのままで構いません」
そのまま受け取った朱里は、かおりに一歩近づいて、
「どっちがいい? 赤か青」
「青で。赤は朱里様の色ですから」
「そう。じゃあ逆にしましょう」
「ふぇ? どうしてですか?」
「逆だと、お互いの相手が近くにいると思えない?」
「………」
「そういう意味で、逆の方が良いんじゃないかと思ったんだけど?」
「……そうですね。かおりが……」
「首に掛けてあげるわね。ちょっとそのままで……」
首に掛けられたロザリオを、しげしげと眺めながら一言、
「ずっと大切にします、朱里様♪」
「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ」
「あの、あの、かおりも朱里様の首に掛けてあげます!」
「あら〜、じゃあお願いしようかしら?」
朱里より少し背の低いかおりに合わせるように膝を少し曲げた朱里と、そんな朱里にゆっくりとロザリオを掛けるかおり。
それを見せつけられている2人は、
「いいね、こういうのも……」
「もう一回高校をやり直したいな〜」
……まんざらでもないようだった。
そして青のロザリオを掛けられた朱里は、
「ウェンディングの誓いってこんな感じなのかしら?」
「はは、経験したことないから分からないですけど……」
「もうあとちょっとだけど、よろしくね。かおり」
「こちらこそよろしくお願いします、朱里様!」
2人の間にある空気は、周囲を巻き込みながら桜色に染まり、来る秋を春へとかえるのかもしれない。
『彩る絆』