君の背中を追う 〜1話〜

竜宮たつき


 師走の冷たい風を切り、乾いた土を蹴りながら、松林の中をオレ(田上俊吾)はどんどん体を前に進めていく。
 ゴールまで残り一キロをきった。疲れ始めた足を動かしながら、ペースを徐々に上げていく。
 前にいた二人に追いつき、一人を追い抜かし、前を走っているもう一人も追い抜いく。
―今日は良い―
 息を切らし、腕と足を動かしながら、漠然とそんな気がした。

 三キロを走りきり、ゴールを通過して、結果を聞いて、予感が的中したことが嬉しかった。
 今日の三千メートルのタイムはこれまでの自己最高タイムを一分近く更新できた。
 タイムを聞いた途端、ただの疲れが心地良いものに変わった気がした。
 ストレッチで体をほぐしながら、まだレース中のみんなを待っていると後ろから、
「やあ、シュン。今日はよかったじゃん! 途中で追いつかれた時はどうしようかと思っちゃったよ〜」
 そう言いながら、オレのよく知る女が背中をバンバンと叩いてくる。

 こいつは村上伊月、オレが目の敵にしている同じ学年、同じ陸上部のちまっこい女だ。
 そんな村上はむちゃくちゃ足が速い。
 大きくない体をいっぱいに使って走っている姿には、顧問の先生も感嘆の声を上げるほどで、この年の一年で一番目立つ存在だった。
 男子連中、さらには先輩たちと並んで走っても何の遜色もない村上の走りは、すぐに先輩たちも一目おくようになり、三年が抜けた時点で一年ながらにエースと呼ばれる存在になった。

「うっせぇ、オレが追いついたんじゃなくて、お前が追いついたんだろうが! なんで、後からスタートしたお前が一キロ手前で既に追いついてくるんだよ! 速すぎだろ?」
 叫ぶオレの前で、村上はニコニコしながら首を横に振り、
「シュンが遅いのよ。ま、ガンバレ〜」
 また背中をバンバンと叩いて歩いていった。その小さいながらに雰囲気のある背中を見送りながら、
「……たくっ、いってえな〜」
 追いつかれ、追い抜かれたときの当然のように前を走っていく村上の背中を思い出すと、無性に悔しくなってきた。
 オレと村上との間にある差は、まったく縮まる気配はなかった。

続く・・・
 

あとがき

 皆さん、こんばんわ、竜宮たつきです。
 新しく始めましたシリーズ「君の背中を追う」です。
 ぶっちゃっけ、冬の時期に合う作品がこれしかなかったので仕方ないんです!
 もうしばらくは既存で勘弁してください。
 新しいのは頭の中にあるので、もうしばらくは既存のものでご勘弁ください。

 謝罪はここまで、次は今後の予定です。
 私の気分しだいでは(来週の金曜日は筆記試験を受けるので、その内容如何によって)来週の金曜に2話をあげる予定でいます。
 いろいろと忙しくなるので、更新はゆっくりになるかもしれませんが、確実に更新はしていけるようにするので、どうかもうしばらくお付き合いください。
 それでは、ナナイロ図書館館長、竜宮たつきでした。


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