姉妹物語  第1話
〜楓と塔子〜

竜宮たつき


「塔子、背中に隠したものは何かしら?」
「な、何もありません!」
「……本当に?」
「うっ、は、はい……」
「本当の本当に?」
「うぅぅぅ………、はい」
「私たちの間に隠し事なんてないわよね?」
「も、もちろんですっ!」
「じゃあもう一回だけね、背中に何を隠したの?」
「うぅぅぅぅぅぅ、楓お姉様はイジワルです……。明日渡そうと思ってのに〜〜〜」
「あらあら、私にだったの? 言ってくれればいいのに」
「言っちゃったらだいなしですよ〜〜〜、驚かせようと思ってたのに〜」
「それは残念ね。私に隠し事なんて、塔子には5年ぐらい早いわよ〜」

 生徒会に所属している楓と、一年生で楓のお手伝いをしている塔子。
 明日は塔子と楓が出会って、ちょうど1年の記念日だった。
 そのため、塔子は楓のためにプレゼントを買っていた。
 一年の記念日を祝うため、そして楓を驚かせるため。
 買ったものをわざわざ自分で、丁寧にラッピングまでしていた。
 そして一番目立つところに「楓お姉様へ」なんて書いてあるので、見せてしまった時点で楓にバレバレだった。

「あらあら、塔子、泣かないで」
「うぅぅぅ、だって〜〜」
「よしよし、いい子だから。これをあげるから泣かないで」
「……ハンカチですか?」
「そうよ。明日は記念日だもの。何か用意しないとと思って……どうかしたの?」
「あの、これを開けて下さい」
「いいの? 明日なのに。………あらあら」
「楓お姉様に似合うと思って」

 楓の手にはスカイブルーのハンカチがあった。
 丁寧に紺色の糸で、『楓』と刺繍がしてあった。
 そして塔子の手にはチェリーピンクのハンカチがあった。
 ぎこちなくも赤い糸で、『塔子』と刺繍がしてあった。
 同じブランド、同じサイズ、そして正反対の色、そしてお互いの名前の刺繍。

「お姉様〜〜〜〜!!」
「あらあら塔子、抱きつかれたら歩きにくいわ」
「えへへ〜〜〜、これからもよろしくお願いします、楓お姉様!!」
「あらあら、こちらこそよろしくね、塔子」
「もふもふです〜〜♪」
「こらっ、塔子! くすぐったい」

 楓の胸に顔をうずめながら、塔子はその柔らかさを満喫している。
 そんな2人のカレンダーに、また1つ記念日が増えた。

『ハンカチ交換記念日』
 



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