「塔子、背中に隠したものは何かしら?」
「な、何もありません!」
「……本当に?」
「うっ、は、はい……」
「本当の本当に?」
「うぅぅぅ………、はい」
「私たちの間に隠し事なんてないわよね?」
「も、もちろんですっ!」
「じゃあもう一回だけね、背中に何を隠したの?」
「うぅぅぅぅぅぅ、楓お姉様はイジワルです……。明日渡そうと思ってのに〜〜〜」
「あらあら、私にだったの? 言ってくれればいいのに」
「言っちゃったらだいなしですよ〜〜〜、驚かせようと思ってたのに〜」
「それは残念ね。私に隠し事なんて、塔子には5年ぐらい早いわよ〜」
生徒会に所属している楓と、一年生で楓のお手伝いをしている塔子。
明日は塔子と楓が出会って、ちょうど1年の記念日だった。
そのため、塔子は楓のためにプレゼントを買っていた。
一年の記念日を祝うため、そして楓を驚かせるため。
買ったものをわざわざ自分で、丁寧にラッピングまでしていた。
そして一番目立つところに「楓お姉様へ」なんて書いてあるので、見せてしまった時点で楓にバレバレだった。
「あらあら、塔子、泣かないで」
「うぅぅぅ、だって〜〜」
「よしよし、いい子だから。これをあげるから泣かないで」
「……ハンカチですか?」
「そうよ。明日は記念日だもの。何か用意しないとと思って……どうかしたの?」
「あの、これを開けて下さい」
「いいの? 明日なのに。………あらあら」
「楓お姉様に似合うと思って」
楓の手にはスカイブルーのハンカチがあった。
丁寧に紺色の糸で、『楓』と刺繍がしてあった。
そして塔子の手にはチェリーピンクのハンカチがあった。
ぎこちなくも赤い糸で、『塔子』と刺繍がしてあった。
同じブランド、同じサイズ、そして正反対の色、そしてお互いの名前の刺繍。
「お姉様〜〜〜〜!!」
「あらあら塔子、抱きつかれたら歩きにくいわ」
「えへへ〜〜〜、これからもよろしくお願いします、楓お姉様!!」
「あらあら、こちらこそよろしくね、塔子」
「もふもふです〜〜♪」
「こらっ、塔子! くすぐったい」
楓の胸に顔をうずめながら、塔子はその柔らかさを満喫している。
そんな2人のカレンダーに、また1つ記念日が増えた。
『ハンカチ交換記念日』