姉妹物語 14話
〜リオとあまね〜

竜宮たつき


「今日は〜、休みが多いわね〜、というわけで今日は解散!」

 プールに来たキャプテンは辺りを見回すなりそう言い、早足に帰っていった。
 ようするに、キャプテンも亜矢の宝探しに参加したいようだった。
 他にもいないメンバーは宝探しに参加しており、来ていた部員も何人かはキャプテンの後について出て行ってしまった。

「さて、うちらはどうするかな?」
「練習しましょうよ。別にアタシは欲しい物もありませんし」
「そうはいかない。私としてはなんでもいいから景品がほしい」
「……お一人でどうぞ」
「そうはいかない。1人で探しても楽しくないじゃない? どうせなら巻き込む相手がいないと」
「キャプテンと行けばいいでしょう? お姉様なんでしょう?」
「だめ、あの人について行くとこき使われるだけだもん」
「どうせ、私をこき使うんでしょう?」
「そうでもないわよ。二人で探すんだもの、きっと楽しいわよ?」
「………遠慮しておきます」
「じゃあ、こうしようかしら?」

 結局、いつものようにお互いの意見を通すためのレースをすることになった。
 練習する姿はまちまちで、大方は帰ったり宝探しに行ってしまっていたりした。

「いつも通りでいいわよね?」
「はい、構いません。今日こそ勝たせてもらいますから」
「そうはいかないわ。勝つのは私よ」
「ふん、その余裕の表情を今日こそ変えてあげますよ」

 いつものような口上のあと、二人はプール端のスタートラインについた。
 リオは近くにいた子に声をかけてスタートの合図をしてもらい、リオが少し出遅れるような形でスタートスした。
 しかしあまねがリオより前にいたのは少しの間のことで、あまねがゴールについたころには、

「遅かったわね?」
「……」

 リオはすでにプールの端で余裕の表情で待っていた。
 結局、あまねはいつものようにリオに勝つことはできずに、リオの宝探しに付き合わされることになった。
 と思いきや、

「なんか疲れたわね〜。あまね、ドリンク」
「ご自分でお取りください」
「勝者の命令よ。ドリンクを取ってちょうだい、歯医者のあまねさん?」
「……はい」
「ありがとう。ところで、探すとしたらどれだと思う?」
「……金一封はもうないでしょう。他にしては」
「一番競争率高そうだものね」
「生徒会長の手書きの参考書はちょっと魅力的ですが」
「勉強は自分でするものよ。私は自分のやり方でやるもの、必要ないわね」
「下から数えたほうが早いリオ様の言葉とは思えませんね?」
「言ってくれるじゃない。あまねもさほど良い方ではないだろ?」
「だから狙っていくのではないですか。学年トップ争いを常に演じる生徒会長が使っていた参考書ですから」
「えぇ〜、じゃあそれを探しに行くの?」
「イヤなんでしょう?」
「分かってるじゃないか。さ、探しに行こう」

 リオは無理やりあまねを引っぱって、大股に歩いていってしまった。

「ちょっ、引っぱらないでください!」
「さ、急ぐわよ〜」

 目的を決めることなく走り出した二人は、学園中を走り回り何かの景品を探し回ったのだが、

「見つからな〜い!」
「そりゃそうですよ。当てもなく走り回っただけじゃないですか!」
「だって、ヒントがなんのことだか分からないんだもん!」
「だもんって……、あ!」

 きーんこーんかーんこーん
 チャイムの音が響いた。
 宝探しの終了を告げるチャイム、そのためだけにわざわざいつもとは違う、午後5時に鳴らされたチャイムに、

「あ〜あ、終わっちゃった」
「そうですね。リオ様が目的もなく走り回るから」
「ヒントを解けないあまねが悪い」
「解けないって、リオ様もじゃないですか!」
「私に期待されてもな〜」
「……そうですね」

 リオは諦めてため息まじりに持っていた新聞を閉じて、とぼとぼとプールのほうに足を向けた。

「あら、どこに行くの?」
「疲れたので少し泳いでから帰ります」
「ちょうどいい! 体も温まったし、私も行こうかな」
「……ちょうどいいって」
「さ、泳ぎに行こうか!」

 まだまだ日は高く、天気も良好、二人の時間はまだまだ続く。

『走りづめの一日』
 



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