姉妹物語 16話
〜静と仁美〜

竜宮たつき


「………」

 新聞部主催の宝探しももう残り15分を切ったころ、静は一枚の白い紙が貼られた連絡用掲示板の前にいた。
 その掲示板は風紀議会が諸連絡のために使うもので、そこにはプリントに混じって宝探しのチケットが何気なく貼られていた。
 しかしそれに気付くものはおらず、制限時間が刻一刻と近づいていた。

「またここに来ていたんですか、静様?」
「仁美、これは何か分かる?」
「……宝探しのチケットですか?」
「そう、交換券ね。新聞部顧問のシスター天苗の文房具セットと手作りのロザリオがもらえるものらしいわ」
「あの人らしいですね?」
「真面目な方ですもの。勉強がんばってね、ということなんでしょうね。にしてもおかしいわ。『普段は誰も見ないような所』で、どうしてここなの?」
「ここは誰もあまり見ないからでしょう?」
「私は毎日チェックしているわ。仁美もそうでしょう?」
「いいえ、私は見なくても知っていますから。静様もそうでしょう?」
「それでも普通は見ない?」
「いいえ、それにここはあまり立ち止まるような場所では無いですから」

 仁美の言うとおり、掲示板は職員室の前にあり、通る人はそれなりにいるが立ち止まる人は少ない。
 一方の生徒会の掲示板は玄関そばにあり、見る人は風紀議会よりは多い。
 また生徒会は分担で日記のようなものを書いて貼っており、それが面白いと評判だったりする。
 変り種の多い生徒会ならではの方法なのかもしれない。

「シスター天苗もこんなところに貼ってしまっては、誰も見ていないことを認めたみたいじゃない」
「まあ、事実ですし」
「私たちも何かすべきなのかしら?」
「それより時間切れの5分前ですよ? シスター天苗のロザリオが欲しいんでしょ?」
「なっ! そんなことは……」
「かわいいものとか好きですもんね、意外と」
「意外とはなによ、意外とは。……私だって女の子なんだから」
「分かりますけどいいんですか? あと4分ですよ?」
「分かったわよ、取ればいいんでしょ!」

 半ば無理やりな逆ギレとともに、静は白いチケットを手に取り、速歩きで新聞部の部室に向かった。
 静は顔をほのかに赤くしながら速歩き、そのすぐ後ろを仁美がにやにやと笑いながらついていった。

「おっ、議長様。えらいぎりぎりやないの? そんなに探すのに苦労したんの? そこまで難しくないって天苗さんから聞いてたんやけど?」
「私は主催者をサポートする側だったから、ほんとうは景品をもらう予定じゃなかったのよ。だけど、仁美がどうしてもって言うから……」
「あっはっは、そんなこと気にせんでもいいのに。生徒会なんて、一年と三年で一つずつ持っていったで?」
「美月も? あの子は景品を出したでしょう? 参加しても大丈夫なの?」
「まあ、隠した場所は隠した本人さんしか知らないことになってるから、そこは問題ないんちゃうかな? さて、景品やね」

 静は無事間に合い、お目当てをゲットして、新聞部の宝探しは全ての景品が発見されて終了した。
 見つけたみんなも、見つけられなかったより多くのみんなも、放課後の一時を楽しめたようだった。
 なにより楽しめたのは、しばらく新聞の書くネタに困ることのない亜矢なのかもしれないが。

『ホクホク顔の裏静』
 



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