姉妹物語 20話
〜沙羅と朝凪と夕凪〜

竜宮たつき


「やったー、ユウの勝ちー♪」
「ユウちゃん強〜い」
「……」

 3人は沙羅の部屋でトランプをしていた。
 沙羅が朝凪と夕凪に何がしたいかと聞いたところ遊びたいと言い、トランプとお菓子と飲み物を買い、沙羅の家に来ていた。
 始めにババ抜き、ポーカーときて、大富豪をしているのだが……

「沙羅様よわ〜い」
「よわーい」
「うるさい、私が弱いんじゃなくてアナタ達がズルイのよ。2人がかりで私を……」
「言い訳だー」
「へちょ〜い」
「くっ、なら神経衰弱で勝負よ!」

 記憶力勝負なら勝てると踏んだ沙羅の提案で始まったのだが……

「沙羅様よわーい」
「よわ〜い」

 結局、早いペースで進んだ神経衰弱は、沙羅が5分の1も取れず、朝凪の圧勝、沙羅は最下位となった。
 それもそのはず、朝凪と夕凪は配置を半分ずつ覚えながら、合図で教え合っていたのだから。

「アナタ達、またズルしたでしょ? お互いに教え合いながら」
「「はい♪」」
「……は〜、ほんとそういうところは頭が回るんだから」

 溜め息混じりの沙羅だったが、言葉にトゲはなく、感心しているようだった。

「ところでアナタ達、勉強は進んでる? もみじさんに聞いたわよ、参考書もらったんでしょ?」
「あんまり〜」
「だって、沙羅様の参考書は分かりにくいんだもーん」
「どうして?」
「解説が理詰めだし〜」
「色分けが逆に見にくいしー」
「「美月さんののほうが分かりやすい〜ー」」
「な、悪かったわね!」
「でも数学は分かりやすかった〜」
「あと化学もー」
「ま、まあ……、ありがとう」
「さ〜、次は何しよっか、アサ?」
「スピードとかー?」
「いいわよ! それなら小細工はできなさそうだし」

 気合い満々な沙羅だったが、

「うっ、これは……」

 朝凪と夕凪は沙羅の札をチェックしながら、出しにくいように出しにくいように進めたため、やっぱり沙羅は勝てなかった。
 その後も3人は思い付く限りゲームをしたのだが、沙羅に白星が付くことはほとんどなかった。
 トランプ自体は1対1対1なのだが、朝凪と夕凪はアイコンタクトを駆使しながら戦っているため、2対1のようなものだった。

「さすがに、悪知恵はよく働くわね……」
「だって、そのほうが楽しいですし〜」
「……それもそうね。そろそろいい時間だけど、大丈夫?」
「「泊まってく〜ー」」
「は? ダメよ、親御さんが心配するでしょ?」
「大丈夫♪」

 そう言って、朝凪は携帯の画面を見せた。

「お母さんの了解はもらってるの〜」

 画面には、「おバカな娘たちですが、そちら様がよろしければよろしくお願いします」などと書かれていた。
 わざわざムービーまで用意しているあたり、もとからその予定だったのだろう。
 携帯が画面の中には、手を振るかわいらしい女性、双子の母親が映っていた。

「泊めてもらえなかったら、一晩野宿なのー」
「可愛いから危険なの〜」
「もう、分かったわよ! お母さんに聞いてみて、大丈夫だったらね?」

 そして沙羅の母からの返答は、
「あら、あちらのお母様から連絡があったわよ? もちろんオッケーしたけど」
 ということだった。
 もちろん、2人は泊まるための準備もしてきており、もちろん両家の了解をもらっていた、昨日のうちに。
 かくして朝凪、夕凪の宿泊は決定したのだが、静かに終わるわけもなく。
 晩ご飯中に一騒動、お風呂で一騒動、寝る前にも一騒動。
 沙羅にとっては、とっても騒がしい1日となったことは言うまでもない。

 『プレイオールデイ』



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