姉妹物語  第6話
〜リオとあまね〜

竜宮たつき


「ぷはっ!」
「お疲れさま、今日もお姉様の勝ち、あまねの負けね」
「くっ、そうですね、リオ様」
「違う違う。うぅ、そうでございますわね、リオ姉様って目を潤ませながら言うのよ」
「どうしてそこまで!」
「だって、ねえ? 負けたらなんでも言う事を聞いてくれるんでしょ?」
「うっ、まあ……」
「約束よね〜?」
「くっ……、はい」
「お姉様は、プールからあがって待っていられるぐらいの圧勝よね〜?」
「くっ、そ、そうでございますわね、リオ姉様」
「ふふ、わかればいいのよ。その口調を明日まできちんと続けるのよ?」
「分かりました……」


 水泳部の2年のリオと、1年のあまねはいつものようにプールの端のスタート台に立っていた。
 そしてスタートの前にこんな約束をした。

「リオ様、今日こそアタシが勝ったら、パフェをおごってもらいますよ!」
「あら、カワイイ。パフェ? 何パフェかしら? すごく女の子っぽいわね?」
「今なんとなく食べたいだけです!」
「まあ構わないわよ。お姉様に勝てたらね? じゃあお姉様が勝ったらいつものやつね?」
「ふ、ふん! かまわないですよ!」

 こんな言葉を交わして始まった一勝負だったが、結果はリオの圧勝だった。
 まあ、いつものことなのだが。


「さあ、今日はもうあがりましょう」
「……はい、リオ姉様」
「不服そうな顔? よっぽどその口調はイヤなの?」
「そ、そうでもございませんわよ、リオ姉様」
「あら、慣れてきた? じゃあ違うことにしてみようかしら……」
「えっ!」
「ふふ、嬉しそうな顔? やっぱりしばらくこのままでいいわね♪」
「くっ! ……冗談がすぎますわね、リオ姉様」
「楽しいでしょう、これぐらいのほうが」
「そうですわね」
「でしょ〜」

 あまねが入部してしばらくして、2人が仲良くなった中間テスト後から、こんな光景はほぼ毎日のように続いていた。
 ある日、リオが一勝負しないかとふっかけ、あまねはノリノリでそれに応じた。
 中学のころから水泳をしていて、自信があったあまねだが、リオとの一戦でその自身は見事に砕かれた。
 リオはあまねよりずっと早くにゴールに到着し、プールから上がってスタート台の上で待っていた。

「あまねちゃん、速いわね〜。自信を持っていいわよ?」
「……」
「ふふ、そんなに睨まないで、大丈夫よ。自由形でアタシに勝てるのはお姉様ぐらいのものだもの。落ち込むことはないわ」
「あ、その……」
「どうしたの?」
「あ、明日も挑戦してもいいですか?」
「……えぇ、もちろんよ」

 それ以来、勝負するようになり、いつのころからかバツゲームがつくようになった。
 そんな放課後の一時、リオはもちろんのことだが、あまねもどこか楽しんでいるようだった。

『お姉様は好敵手』
 



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