姉妹物語  第8話
〜亜矢ともみじ〜

竜宮たつき


「あーぁ、なんか面白いネタ無いんかな〜、もみじ?」
「陸上部に期待の新人がいるらしいですよ? 亜矢様」
「それはもう1回やった。咲夜さんが目をつけてる子やろ? なんて言ったっけ?」
「衛さんですね。今度の記録会に出るらしいので、紹介ページを作ってみては?」
「やーよ、ただの記録会やろ? 気がのらんわ」
「はぁ、そうですか……」
「こう、もっと、なんか……、面白いこととかないんかな〜?」
「そうは言われましても……」

 部室棟の一角、今度は新聞部の部室の中、亜矢はパソコンとにらめっこしながら、もみじに問い掛けた。
 6月の初め、中間テストも終わり、ひとまず一段落ついたものの、しばらくは何の行事も無い日が続いていた。
 期末テストはもうしばらく先、球技大会や校外学習も中間テストの前に終わってしまい、ほんとうに行事のない日が続いていた。
 新聞部にとって、行事が何もないということは、何も書くことがないということだった。
 もちろん、主にもみじからだが様々な案が出た。

「文芸部に何か書いてもらっては?」
「この前書いてもろうたとこ。マンネリは購読者離れの原因になるよ?」
「では教員にでもインタビューでもしてみては?」
「それも4月にやったやんよ。いまさらなにを聞くっていうん?」

 出てきた案を亜矢は一つ一つ却下していった。
 一方の亜矢から出る案といえば、

「なんかこう、ツチノコ発見! みたいな?」
「見つけてないでしょう?」
「じゃあ、謎の生物襲来! とか?」
「襲来してないじゃないですか?」
「やったら、宇宙人と遭遇! なんてのは?」
「遭遇したんですか?」
「してもらうねん。よろしく! もみじちゃん?」
「無理ですよ!」

 ハチャメチャな案ばかりで、とても現実にできそうにはなかった。
 しかも、自分でどうにかするのではなく、もみじを頼りにする案ばかりだった。
 そしてもみじから出た最終策が、

「いっそ休刊にすればどうでしょう?」
「それはあかん。新聞は書いてこそや」

 他にないとでも言うように言ったもみじだったが、亜矢に一蹴され、思いつきのように発した一言が原因でとんでもないことになった。

「じゃあどうします? 埋蔵金の地図でも作ってみますか?」
「………そうか」
「ちょっ、冗談ですよ? そんな妙案! みたいな表情をしないでください!」
「いいやん、次の新聞には宝の地図でもつけよか! 賞品はうちとか生徒会とか、顧問の先生にでも出してもろて。後は理事長あたりにもお願いしてみて……」
「………」
「そうやな、5か所ぐらいに分けて……」

 もみじの不用意な発言は亜矢のなかでどんどん形作られていく。
 そして、4日後発行された新聞には5か所のバツがついた宝の地図がついていた。
 そしてさらに一週間後の新聞には、宝捜しの結果発表がされる予定になっている。
 亜矢の唐突な思い付きに、もみじは引っ張られてばかりだった。
 溜め息は多いものの、決してイヤなわけではなく、もみじは今日も亜矢の側にいる。

『揃わぬ足並み』
 



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